
できれば、もっと自然に近いところで過ごした方が、きっと素敵な時間がもてる。 八ヶ岳に別荘を持った方、永住している方、宿泊で来られた方にも体験してもらいたい。 そして八ヶ岳をもっと好きになってもらいたい。 そんな思いで、山梨県内で地域共生型の市民ネットワーク社会作りに取り組んでいる若者たちとともに、 八ヶ岳南麓エリアで農業や林業の体験を通じて、地元の人たちと触れ合う。そんな試みが始まります。 今年は8つのカリキュラムを用意。畑で汗を流し、自然の恵みをいただく、 自然の力を全身で浴びるなど、八ヶ岳南麓に来ないと体験できない魅力的なプログラムです。 今回、八ヶ岳泉郷ファームのプログラムを一緒に企画していただく NPO法人えがおつなげて(以下えがおつなげて)※1 代表理事の曽根原久司さんと、 セラヴィリゾート泉郷不動産事業本部長河原田。「八ヶ岳泉郷ファーム」のプログラムについて語り合いました。

「今年から、えがおつなげてのみなさんと連携して、
農業、林業を通じて、もっと八ヶ岳の魅力を感じてもらうプログラムをスタートしますが、そもそも曽根原さんが八ヶ岳で農業活動を始めたきっかけは?」
「ここに来る前は東京で銀行向けの経営コンサルタント会社を
経営していましたが、バブルの天国と地獄を経験して、このままでは多分日本は行き詰る。高度経済成長以来の経済構造はもうもたない、
日本の将来は危ういと実感するようになりました。」
「それで農業支援に?」
「今では盛んに言われていますけど、すでにその当時から日本の食料自給率は低かったんですね。
昔はみんな自給自足だった国が、一気に農業から違う産業へと構造転換してしまった。がはじけて、このままで国が持続できるのかどうかという不安がありました。
もともと私は長野県飯田市の出身なんですが、実家は農家ではなかったんですけど、田舎の現実はずっと見てきていました。」
「なるほど、それで危機感を感じるようになった。 長野ではなく八ヶ岳に来た理由は?」

「東京と飯田のちょうど中間地点で、都会との距離感だと、
このエリアが一番いいエリアだと感じたんですね。都市生活者にとって、日帰りできる距離、移動時間が2時間以内というのが重要なポイントでもあるんですね。
しかも、ここは自然が豊かで、八ヶ岳、南アルプス、富士山と、眺めも最高。
森もあるし、水資源もいい。しかも日照時間が日本でももっとも長いエリアでしょう。
当時、経営コンサルタントの私から見て、21世紀の重要な資源を保有している地域であると考えたからです。」
「そうかもしれませんね。我々も長年八ヶ岳で観光業、不動産業を営んでいますが、
昔の観光スタイルとは変わってきています。最近は旅行をする(別荘を持つ)動機として、「環境が良い」「景色が良い」
「名所旧跡がある」という理由よりは、そこで何ができるか、どんな体験ができるかを求められます。
その点で農業や林業を体験したい(やりたい)というニーズは極めて高いと感じています。」
「そうでしょう。特に食べることは人間が生きていく上でもっとも根源的に必要なことです。
バブル経済でそこのあたりのことを置き去りにしてしまい、偏った産業成長があり、本能的にそのことに気が付いた人は自分で家庭菜園とかを始めたんだと思います。
私も中長期的には必ず農的需要が求められる時代へと変わっていくなと、経営コンサルの仕事をしているときから思い始め、コンサルの仕事もしながら、
農業支援同様の活動も始めていました。」
「私たちも3年くらい前から地元の若い農家さんと連携して、
農業体験や農家さんお手伝いボランティアを始めたら、結構人気です。
土だらけになって草むしりを手伝ってくれるんですね、お客様が。
そしてそのお客様がリピーターさんになったり、ついに別荘をたててしまった方や、
こちらに移り住んでしまった方もいます。」
「そうでしょうね。特に都市生活者は、そのような体験をすることを願っているんですよ。
1995年に思い切って白州に移住したんですけど、意外にも家内も賛成してくれましてね。移住には私よりも積極的でした。」

「奥さんが賛成してくれたのはおおきいですね。」
「それから5年かけて自分で耕作放棄地※2を開墾して、6年目に今のNPOを設立しました。
少しずつ地元の方たちとの交流も深めてきています。」
「八ヶ岳のある北杜市エリアは、耕作放棄地が多く、山梨県内では一番らしいですね。」
「山梨県は耕作放棄地が田畑の面積の17%を占めています。
これは全国でも第2位なんですね。北杜市内で約800haくらいですよ。90m×90mの野球場が800個です。
しかしながら、日照時間も日本でもっとも長く、自然環境には恵まれているんです。 」
「先日、えがおつなげてさんのご指導のもと機械に頼らず
耕作放棄地の開墾を体験させてもらいましたが、本当に達成感がありますね」

「自分でやってみないと分からないでしょ。それまでススキや篠(竹の一種)で閉ざされた視界がパッと開け、
目の前に富士山が見えるんですよ。風景が変わるっていう、その時の喜びは得がたいですね。」
「しかし最初に開墾に入られたのは増富地区※3でしょ?かなり条件が厳しいのでは?」
「高齢化率62%、耕作放棄地率63%と、過疎高齢化の典型的な地区です。
生産人口も減少し、農業従事者の平均年齢は70歳代です。
そんな厳しい環境の中、8年くらい前から若者開墾ボランティアというのを募集して、
毎年500人くらい集まるんですよ。彼らと3年かけて3ha開墾しました。」
「よくそんなにボランティアが集まりましたね。」
「内閣府の調査では、都市生活者の約3割が農業体験をしたいそうです。
でも、そんなニーズを満たしている人たちは、その内の1割程度といわれています。
地域も地元にある有名無名の様々な資産を活用して、
都市部の人とたちに体験の場を提供すればニーズのマッチングは可能なんです。
東京では家庭菜園や市民農園がすごい人気で、なかなか抽選に当たらない、そんな現象が起きているでしょう。
そのニーズのミスマッチを結びつければいい。都会の生活者と地方の農家の出会い系ですよ。」
「そうですよ、別荘へ移住する人もここ数年で急激に増えてきて、
ほとんどの方が農園を借りたりして自分で野菜作りをしています。
宿泊のお客様の夏休みイベント「野菜収穫体験」なんか大人気です。
また、当社の保養所契約企業さんからもCSR活動の一環として、
環境整備活動をしたいので企画して欲しいとの要望も入ってきます。
そのようなニーズを泉郷がマッチングできればいいと思っています。」
「それが我々日本人本来の持つDNAなんですよ。自分たちで作って、自分たちで食べる。
ごく当たり前のことだから誰でも美味しさや幸福感を発見できるんだと思います。
地方で放棄された田畑をどうやって活性化するか、それが地方活性化に結びつくんじゃないかって。
そこで東京の企業と地方を結ぶというアイデアですね。ちょうど企業も地域貢献や社会活動を気にし始め、
環境への配慮や持続型社会への転換などを模索するようになって来たのも、我々の活動を後押ししてくれました。」

「そうです。丸の内で働く人たちにお酒造りを一緒にしてみませんか、と呼びかけたら、
OLさんたちがわっと集まりました。田んぼでお米を育て、地元の酒蔵で仕込んで純米酒※5を造る。
それを丸の内限定で販売しました。農村には見えにくくなっている農的資源があります。
それらを都市生活者の視点で新しいカタチの活用方法を考える。
そして都市生活者と農村とがWIN-WINの関係になるといいですね。」
「農林業はもちろん、伝統文化、技術、自然エネルギーなど、様々な文化もありますからね。」
「ロシアではダーチャという農園付きの別荘スタイルが古くからあり、そこに行けば自給自足ができる。
ソビエト崩壊の際に市場に食料がなくなっても大きな混乱はなかったといいます。」
「北杜市伝来品種の青大豆を使った味噌作りや、純米酒作り、蕎麦うちやパン作りなど、
みなさんが楽しみながら農体験をできるプログラムを企画していきたいと思います。
そして安心、安全な泉郷ブランドとしての野菜やジャム、味噌、蕎麦なんかできたら楽しいですね。夢は広がります。
八ヶ岳南麓、北杜市一体となった元気なプログラムを、ひとつひとつ実行していきましょう。」

農業をはじめとした地域共生型の市民ネットワーク社会を作ることを目的に、2001年設立。北杜市を主な拠点とし、グリーンツーリズムなど都市と農村の交流事業を実施。関東ツーリズム大学事業を運営 。
全国的に就農者数が激減する傾向に歯止めがかからず、農作物が生産されない放棄地が増え続けている。 北杜市は山梨県内ではもっとも広い耕作放棄地面積を有しており、再利用などの施策が求められている。
中央高速道、須玉インターから北へ。増富地域の人口650人、そのうち400人は65歳以上の高齢者、 農地の2/3が耕作放棄されている限界集落地域です。北杜市とともに地域活性化のプログラムを開発し、 成功事例として内閣総理大臣賞なども受賞。この地区で3haの畑を開墾。
2008年より活動をスタートした三菱地所のCSR活動。えがおつなげてと連携して 「都市も農山村もお互いに元気になる社会」を築いている 。
空と土プロジェクトの活動の一環で、東京丸の内の就業者を対象とした酒米づくりプロジェクトを実施。 できたお酒を丸の内限定で販売したところ大きな話題となり、農業体験希望者も増え続けている。